ある日、友人に連れられて入った居酒屋。
10席くらいの狭い店内。
L字型のカウンターになっており、60代くらいの男性がそこを一人で切り盛りしている様子でした。
「飲み物は何にしましょう?」
と聞かれ、
「生中で。」
そう答えると、
店主はグラスを持った右手をサーバーの注ぎ口に近づけ、
左腕を巻き込む形でレバーを手前に倒し、勢いよくビールが注がれ始めました。
その店主の後ろ姿を見ていた僕は少し違和感を覚えました。
店主が振り返ったとき、それに気づきました。
左の手のひら・・・
手首から上の部分がありませんでした。
少し驚きましたがビールを受け取る時は平静を装いました。
これまでに何度か身体の一部が欠損された方を見たことはありましたが、飲食業で出会ったのは初めてでした。
友人から後に聞いた話だと事故で手を失ったらしいとのことでした。
その当時の店内は常連らしい人達ばかりだったせいか誰もそれを気にしている様子はありませんでした。
僕も普通に接していたので、あからさまにそのことを気にする人も少ないとは思いますが…。
それから数月後、店主と偶然街で再開しました。
一度だけ会っただけの僕のことを覚えていてくれて、
とびきりの笑顔で話しかけてくれました。
店主と『その手』について話したことはありませんが、不便だろうなと思いました。
あくまで僕の想像でしかありませんが、
事故は想像を絶する痛みだっただろうし、
手を失った後は
悲しみ、怒り、苦しみ、が
あったことは容易に想像できます。
自らの不運を呪ったこともあったと思います。
もしかしたら今も悩んでいるのかもしれません。
それは本人にしか分かりません。
ただあんなに明るい笑顔でどんな人とも楽しそうに接する彼に対して、ネガティブな印象はまったく受けませんでした。
今までの人生で・・・
手首を骨折したり、
椎間板ヘルニアになったり、
片耳が聞こえにくくなったり、
などなど・・・。
生活が不便な状態になったことがありました。
ヘルニアに関して言えば今でも痛みがぶりかえしたりもしますが( ´Д`)
ただ、それらになったことで自分が不幸だと思ったことはありません。
上記の店主もきっと不幸だとは思っていないはずです。自分の手を失ったことについて受け入れたんじゃないかと思います。
「いつまで考えても手は戻ってこない」
「これはもうしょうがない」
だから自分らしく前向きに生きようと。
僕の中では何年たってもPATMに対して折り合いがつけられません。
「原因も治療法もわからない」
「なら、しょうがない。周りを気にせず生きよう」
そう心の中で割り切ったつもりで前向きに生きようと思っても、周りの反応で現実に引き戻され、PATMに対する負の感情がすぐに揺り起こされてしまいます。申し訳ない気持ちから後ろ向きな気持ちになってしまいます。
発症当初はそんなことはありませんでしたが、周りと自分を比べてしまうことも徐々に増えてきました。
最近では同級生たちは仕事で評価されたり、家庭を築いたり、家を建てたり、一生懸命幸せを探して立派な大人になっています。
将来の理想像としてそういった姿を昔から明確に望んでいたとは言えないけど、年齢的におっさんと呼ばれる世代になってみて自らの現状に情けない気持ちになります。
さらにメディアやSNSでたわいもない炎上ニュースなどを見て、
「いや!!お前より俺の方が不幸だから!」
「そんなことで、悩むなよ!」
と『不幸~1グランプリ』を脳内でたまに開催したりします。
自分が一番不幸だと自慢したがるほど『卑屈な人間』になったりします。
その卑屈さを肯定するために他人には甘えるなと…。
いや、落ち着いて考えれば分かるんです。
人それぞれ悩みがあって、その人にしか分からない辛さがある。
他人からPATMの辛さを理解してもらえないことも、自分の不幸自慢をしてるのを置き換えて考えれば合点がいきます。
ただ、もしもPATMでなくて他の病気になっていたとしても『卑屈な人間』になっていたかもしれませんし。
そう考えたら結局精神的に強くなるしかない。
もっとポジティブになるしかない。
「そんなこと言っても何をすればいいのか」
「強くなる?ポジティブ?」
そんなとき、フっとある人を思い出しました。
「たくよ〜さん!こんばんはっ!!」
過去に数ヶ月ほど通っていたジムのインストラクターだった『Maezono』さんの姿でした。
言い方は悪いけどアホみたいに明るくて、元気。ジム以外で見かけたときも同じだったんで根っからの太陽みたいな性格なんだろうと。彼はオーラがきらきら『陽』なら僕は『陰』ですね( ˊ̱˂˃ˋ̱ )
やっぱり体もすごく鍛えていて。
彼のようになるには…体を鍛えればっ!?
ということで筋トレ始めました٩( ‘ω’ )و
安直な考えですかね(^_^;)
筋肉ムキムキの人ってポジティブな人が多いですし。
まあ筋トレにデメリットはないですからやってみようかと。
目指せ『キャプテン・○メリカ』ボディ。
今はキャプテンが超人血清打たれる前の体みたいに痩せていますが・・・。
あっ、映画のアベンジャーズシリーズに出てくるキャラクターです。クソ面白いので観たらハマると思います!
過去にも筋トレをしていましたが、もっと追い込んでいこうかと。
そんな感じでちょっとづつ前向きに生きる術も模索して参ります。
あの店主のように生きられるように。
そして自分を受け入れられるようになろう。
おしまい
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